いよいよ始動が決まった映画B学校。
映画美学校にまつわる人たちと、
学校の内外であれこれ遊ぶ「今日、ひまでしょ?」コーナーの初回として、 

まずはシンスケ局員と知史局員、そして映画とかとんと観てないオガワ編集局長が、
ちょっとずつ親睦を深めるべく、一緒にビデオ屋さんに行ってみました。(小川志津子)


シンスケ「どこから行きましょうか……」

知史「僕は、いつもは下のフロアから行きますよ。下行って、上行って、もう一回忘れ物がないか、下を見ます」

シンスケ「じゃあ、下から行きましょう」


 同い年のふたり。でも「学年でいうと一個上」なんだけど「映画美学校では後輩」、みたいな諸事情が絡まって、ふたりは微妙にですます語です。


シンスケ「一応、邦画の新入荷の棚に来ましたけども」

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「新入荷」は「新作」と違って、今までDVD化されてなかったけどついにDVDになった作品のコーナーです。全体的に、ただよう昭和臭。


シンスケ「あ、『みな殺しの霊歌』だ。加藤泰は僕、観ることが出来るものは全て劇場で観てるんですよ。これは、その中でも、結構異色。構成だったかな?のポディションに、山田洋次が入ってるんですよね。それでか、コミカルなシーンも実はあって。他の加藤泰作品とは、全然違う感じがする」

知史「そもそも、現代映画をあんまり撮ってないですからね」

シンスケ「これ僕は、スパンで言うと2年に1回は観てます(笑)」

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 そういう異色の映画に、映画好きの皆さんはどうやって行き着くんだろう。オガワはそこが不思議でなりません。


知史「どうやって探してるのかな……監督名で行くことが多いですかね。『やさぐれ姉御伝 総括リンチ』って言われたら、普通の人は手が伸びませんよね(笑)。それを、僕らは観るんですけど、なぜか。……あ、『狙撃」じゃないですか。『弾痕』もありますね」

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知史「加山雄三って『若大将』で有名だけど、こういうハードボイルドな映画にも出ていて。『狙撃』は堀川弘通っていう、東宝の監督さんなんですけど。加山雄三が、スナイパーなんですよね。それで要人を暗殺していく。これ、面白いです」

シンスケ「そうか。借りてみようかな。信頼してる人が『面白い』って言ってると、「これ借りようかな」って思いますよね」

知史「東宝の映画って、何というか……お行儀よく、毒にも薬にもならない感があるように思うんですけど(笑)、意外と『狙撃』とか続編の『弾痕』は攻めてる感じがすごくあって。森谷司郎監督の『弾痕』では、69年に、ベ平連の人たちが新宿駅の西口を占拠した「フォークゲリラ」の現場へ行って、ドキュメンタリー的に撮影したりしてるんですよね。内容も、政治的なモチーフが多くて」

シンスケ「それはたしかに、東宝感はないね(笑)」

 そして、一行はするりと「新作」の棚へ。
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 知史「これ観ました。『地球防衛未亡人』」

シンスケ「壇蜜だ」

知史「壇蜜が、地球防衛軍の隊員で、未亡人なんですけど(笑)。最終的に、自分のエロさを駆使して怪獣を倒すっていう話で」

シンスケ「素晴らしい」

知史「河崎実監督ってこういう、めっちゃ低予算の変な映画を作ってるんですけど。さっき言ったような、東宝映画の裏側に何か息づいちゃっている政治性、みたいなものに、実は意識的に取り組んでいるんじゃないかなって、僕は勝手に思ってるんですけど(笑)」

シンスケ「政治性、なんだ」

知史「東映とか、いわゆる松竹ヌーヴェルヴァーグの映画とかは、わかりやすく反骨的だったり反体制的な立場だったりするけど、東宝の映画って、そういうものをあえて描いてないがゆえに、それが如実に出ちゃってる感じがするんですよ」

シンスケ「なるほどね。一見、体制側だと思われかねないよね。明確にはそういうこと、何もやっていないはずだから」

知史「だからこそ、それが何かを映し出すんですよ。クレージーキャッツの『クレージー黄金作戦』っていう映画で、アメリカ人の大富豪が車にひかれて、谷啓がそれを介抱したおかげで遺産をもらって、みんなでラスベガスで踊りまくるっていうのがあるんですけど(笑)、話だけではわからないけど、観るとすごく、政治を感じるんですよ。描かれてないのに。……まあ、僕の妄想なんですけどね(笑)」


 なんか、「観る映画を選ぶ」というよりは、「見つけた映画について語る」ことが楽しくなってきた一行。

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シンスケ「この『放課後ロスト』は映画美学校生が2人、監督をしてますね。ガールズラブを描いた、3本の短編のオムニバスなんですけど。2本めがフィクション・コース修了生の名倉愛さんの作品で、最初の3カットで『あ、ドラマをやろうとしているな』というのがわかって。で、3本めの『倍音』なんですけど、監督をした大九明子さんって結構、ポップに物語を語れる、語りに奉仕出来る監督だと僕は思っていて。でもこれは、ポップの他にもやりたかったことをやりきってる。松岡茉優さんがヒロインなんですけど、2人の女の子が歌っていて、どんどん場面が展開していく感じとかが、すごいなって思いました」


 ああやばい、旧作コーナーに行ってしまったら大変なことになりそうな気がする。口々にそんなことを言いながら、でも彼らの足はまっすぐに旧作コーナーへ。


シンスケ「ああ、『るろ剣』があるなあ」

知史「『るろ剣』がありますねえ」

シンスケ「『ルパン三世』もある」

知史「ありますねえ」

シンスケ「……なんだこのやりとり(笑)」

 そして、オガワは知らなかったのですが、『ルパン三世』は過去にも実写化されているのですね。でもそれを、小栗旬のルパンとはまるで離れた棚で発見。だめじゃん、隣に置かなきゃ! 

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シンスケ「ああ、陳列に文句言う企画って面白いかもしれないですね(笑)」

知史「俺結構、小学生の時とか、『ゴジラ』を順番通りに並べ替えたりしてましたね。『違うじゃん、ちゃんと仕事しろよー』とか思いながら」

シンスケ「あと、POPって大きいですよね。何書いてんだ?みたいなのもあるし、」

知史「意外とわかってるね君!っていうのもある。POPを見ると、その店のセンスみたいなものがわかりますよね。って何様なんだろう僕らは(笑)」


 そして2人の足は、ある棚で止まります。

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知史「松本清張ものって、観ます?……なんか東宝の回し者みたいになってるけど(笑)。『黒い画集』シリーズ、これめちゃくちゃ面白いです。『黒い画集 第二話 寒流』の鈴木英夫っていう監督は、東宝でフィルム・ノワールっぽいものをたくさん撮っていた人で、すごい変わってるんですよね。まるで盛り上がらないまま、終わったりするんです。フィルム・ノワールとかいう次元を超えて、もはや不条理劇の域っていうか。何のカタルシスもなく終わるっていう。ちょっと怖い映画です」


 他には池内淳子主演『けものみち』もおすすめだそうです。


知史「須川栄三っていう監督で、脚本が白坂依志夫っていう、ずっと増村保造とタッグを組んで、大映とかで作品を作ってた人なんですけど」


 その脳内データブックがいったいどうなってるのかをおばさんは知りたい。


知史「旅館の女中が、ある男に出会うことによって、権力を握っていくっていう話なんですけど。その、出会いのシーンがすごくよくて。バーで女が飲んでると、池部良がやってきて、上の階で話そうっていう意味で『上に行きませんか』って言うんですよ。ほんとにその言葉の通り、上に行こうとする2人の話だから。そういう粋なせりふって、白坂さんらしいなっていうか。今やるとちょっとクサいかもしれないけど。この作品も、いいですよ」


 シンスケくんは阪本順治監督のコーナーに足を止めます。
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シンスケ「『行きずりの街』。これ、一見超シリアスじゃないですか。全体的には確かにシリアスかつハードボイルドなんですけど、仲村トオルと小西真奈美の、部屋のシーンがあるんですね。仲村トオルの、パンツをめぐるくだりなんですけど。そこが、爆笑の面白さなんで、ぜひ観て欲しいです(笑)」


 棚を横切り、グラビアアイドルのコーナーを経て、いよいよロマンポルノのコーナーへ。……と、ここでデジカメが痛恨の電池切れ! 邦画フロアはまだ半分くらい、洋画コーナーに至っては手付かずでまるごと残ってるぞ! 初回からいきなりの危機。どうするどうなる、続きは次回の更新で。