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 さて、ここから先は、洋画のフロア。当然ほぼ全部横文字だし、どこからかじりついたらいいのか、膨大すぎて見当がつかきません。だから「たまたま手元にあったもの」から触れてみることにしました。(小川志津子)





シンスケ「あ、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』。原題は『X-Men: First Class』です。なぜタイトルを変えたのか理解できませんが、これ、X-MENシリーズの最高傑作ですよ、俺は譲らないです。パラボラアンテナみたいなのを、超念力みたいなのでもって、こっちに向けるんだ!みたいなシーンがあるんですよ。そこで、そのカットバックに、泣く(笑)。この作品の傑作度がこの説明ではまったく伝わらないですけど」

知史「俺は最近すごくよかったSFっていうと、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』。めちゃくちゃよかった。かなりよかった。……さりげなく「めちゃくちゃ」を「かなり」に訂正しましたけど(笑)。あ、これも面白いですよ。『電子頭脳人間』。てんかん患者の脳をいじって治療しようとするんだけど、手術をミスって、制御不能な怪物に成り果ててしまう。で、最後、警察に囲まれるんですけど、掘ってあった墓の穴に落ちてしまうんですね。警察がいくら撃っても、水平方向の攻撃では死ねないわけです。で、結局ヘリコプターからとどめを刺されるという。僕は、あのヘリコプターは、天使なんだって思って」

シンスケ「(爆笑)」

知史「泣きましたよ僕は」

シンスケ「泣いたか」

知史「これも良いですよね。『遊星からの物体X ファーストコンタクト』。これは最近リメイクされたやつで、『遊星からの物体X』の前日譚なんですよ。つまり、これの最後のシーンが、ジョン・カーペンター版の最初につながる。リメイクにしては、かなり面白かった」

シンスケ「タルコフスキーだ。大学生時代に全て劇場で観た、というのは書き換えられた記憶のはずですが…『ストーカー』面白いよね」

知史「うん、『ストーカー』、俺もかなり好きな方です」


 余談ですがタルコフスキーの『ストーカー』と『惑星ソラリス』は、この4月に上演される映画美学校アクターズ・コース修了公演『石のような水』の礎になっている2本です。


知史「僕はタルコフスキーだと『ノスタルジア』が一番好き。ろうそくに火をつけて、泉の端から端まで、炎を消さずに渡りきれたら、世界が救われるって勝手に決めつけた男の話。それをじわじわと延々撮るっていうね。たまらないですよね」
シンスケ「俺は『ストーカー』か『サクリファイス』かな。あえて…」 


 これも余談ですがタルコフスキーとか、他にも長い片仮名の通好みな監督作品が、アダルトコーナーの暖簾のすぐそばに配置されてるんですね。細やかな配慮ですよね。


知史「あ、僕ドキュメンタリーも好きなんですよ。田原総一朗」


 そう、ドキュメンタリーコーナーもね、暖簾のすぐ横なんですよね。


知史「田原さんがかつて東京12チャンネル時代に撮ったドキュメンタリー番組を、スタジオで水道橋博士と一緒に観る、っていうDVDなんですけど、すごく面白くて。どこか、映画っぽいんですよね。第二次羽田闘争を見学しに行く右翼青年が映ってるんだけど、そこに今でいうオーディオコメンタリーみたいに、見学した時のことを振り返る、彼の声が被さるんですよ。「日本が一丸とならなきゃいけない時に、あいつらけしからんですよ」って。画面では左翼の人たちと肩を組んで笑ってたりするのに(笑)。伝わってくるメッセージが、分散してたり絡みあったり、着地点がわからなくなるんですよね。で、観終わった後、あれは何だったのか考えざるを得なくなる。これって、すごく映画っぽいんじゃないかって思いますね」
シンスケ「僕は政治とか何一つ知らないです。大学の学部が政治経済学部で、ゼミで政治哲学をやっていましたが、何一つ知りません」 


 そしてフランス映画の棚へ。ここから、二人の様子がちょっとおかしくなります。


シンスケ「俺はほら、B学校のプロフィールにも書いたけど、「脱シネフィル」をしたから語らないですよ何も」

知史「俺だって! ゴダールとか観たことないっすよ1本も」

シンスケ「おいこら(笑)」

知史「『フレディ・ビアシュへの手紙』とか、聞いたこともないし」

シンスケ「俺も、知らないな。もはや女性にしか興味ないから」

知史「映画美学校にシネフィルなんて今、いませんからね。都市伝説ですから」


 言えば言うほど遠ざかる何か。じゃあかつてシネフィルだった頃は、どんなふうだったの?


シンスケ「ひたすら!っていう感じでしたね。とにかく劇場に行って、とにかく借りて、とにかく本を読んで。場合によっては原書にもあたる。自分が「影響を受けた映画人」たちが、その映画をどういう見方をするのかを知った上で観る、その上で、自分の感想にはウソをつかないで、もう一回映画を考えるっていう感じ。でもそれだけでは一般の方々には、一般社会に出たら通用しない、っていうのを、ある時点で知るわけです(笑)。あの頃は、シャブロルとか好きでしたね」

知史「ああ。シャブロル派なんですね。ヌーヴェル・ヴァーグだと、シャブロルだ、と」

シンスケ「んー、そこも、あえて、なんですけど。……何の話してるかさっぱりわからないでしょオガワさん」


 ……わかりません。


シンスケ「『刑事ベラミー』を観に行ったんです。劇中、ベラミーと奥さんがひたすら仲がいいんですよ。で、劇場でたまたま一緒だった仲の良い同期の女性と観終わった後飲みに行って「あの二人は絶対再婚同士だ」って裏設定を語りだして(笑)。そういう映画の見方もあるんだなあと思って」

知史「確かファースト・カットが小高い丘からお墓をとらえたショットで。あーシャブロルの遺作はお墓から始まるんだなあとか、いろいろ思いました」

シンスケ「お、ロメールだ。……ロメール派ではないな、俺は。あえて…」

知史「ヌーヴェル・ヴァーグの左岸と右岸で言ったら、かたやロメール、かたやクリス・マルケルですよ」


 ……すみませんわかりません!


知史「ロメールいいっすよー。俺ロメール派っす。ほら、『緑の光線』。僕はあの……前世で観てるんですけど(笑)、だから何も知らないんですけど、でも、いいんですよ。ちょっと年齢のいった女性が、バカンスでひとり、孤独を満喫するんですね。それでふと、風が吹いてきて、草がざぁーっと鳴って、突然彼女が泣くんです」

シンスケ「そりゃ、泣くよね。俺も泣いた。もちろんロメールなんか、一本も観たことないけど」

知史「一番軽くて最高なのは『美しき結婚』。ドスがきいてて最高なのは『冬物語』ですかね」


 私はね、局長オガワは、実はビデオ屋さんが得意ではありません。棚の真ん中に身を置くと、選択肢がありすぎて途方に暮れるのです。どの棚へ行って、どの1本から手を付けたらいいのか、とてもとても困る。どんなに頑張っても、私はこのほとんどをたぶん観ないまま人生を終えるわけで、だから「自分の人生が取り逃してしまう(であろう)もの」たちを突きつけられてるような気がして、急き立てられるまま、そそくさと逃げ帰るのです。


シンスケ「あ、俳優別コーナーなんだねここは。……「ジャン・レノが出てるからこれ観よう!」って普通なるのかな(笑)」

知史「ジェラール・ドパルデュー出てるから観よう!」とはならないですよね」

シンスケ「でもこの人が出てたら俺は観る。クリント・イーストウッド!もはや抱かれてもいい!」

知史「ああ。イーストウッドが出てたら面白いだろう、っていう感じは結構ありますね」

シンスケ「うん。しっくりくる」

知史「ジャン・ギャバンの『曳き船』。ジャン・グレミヨン監督ですね。船の汽笛が鳴るシーンがあるんだけど、それが怪物の雄叫びみたいに聞こえるんですよ。『高原の情熱』でも、工場のサイレンもそんなふうに聞こえたり。『白い足』っていう映画だと、回想シーンに入る時に、シャンデリアがぱあっと光るんですけど、なんか、シャンデリアが生きてるみたいな感じで。人は死体みたいに無表情だったりするのに、物が生きてて人が死んでる、すごい不思議な世界観なんですよ」

シンスケ「……でも俺こんなにいろんな棚を見て回ることって普段ないなあ。目星をつけたところに、スッ、スッて行って、取って、会計って感じ」

知史「新作コーナーも、一応ばーっと見るけど、高いじゃないですか」

シンスケ「だから劇場で見逃したやつは、新作で借りるのは悔しいから、準新作になるまで待ちます(笑)。あと「発掘良品」のコーナーが好き。ずっとVHSしかなかったのが、DVD化されると、ここに並ぶので。でもだいたい観終わっちゃったな……」


 棚を「だいたい観終わっちゃう」ってなんだ。1日どれくらい観ればそんなことになるの?


知史「1日で? 最大……7本とか。でも俺、数年前までは1日5本とか観てたけど、最近はそんなに観ない」

シンスケ「俺は、最大でも5本ぐらいかなあ。最近は、気合い入れないと一本も観れなくなりました(笑)。そもそも家でDVDを観れなくなって、仕事も家だと「誘惑」が多くてとてもじゃないけどできないので、喫茶店かファミレスにPC持ち込んで観てることの方が多いかな」


 ええっ! 新世代!


知史「うちはプロジェクターがあるから、家で観ますけど」


 えええっ! ハイソサエティー!


知史「でもやっぱ、劇場で観るのが一番好きです。部屋で観ると、ダレてくる」


 そう、お家で観ると電話鳴ったりお湯が湧いたりいろいろ気が散るもんね。


知史「あ、これです、クリス・マルケル。『レヴェル5』とか『サン・ソレイユ』とかが僕は好きで。「見る」とか「撮る」ってどういうことだろう、ってことをいろいろ考えさせられる。この『ラ・ジュテ』っていう短編は、ほぼ全カット、静止画なんですよ。観てみると、面白いっすよ。美術館に行くような感じで」

シンスケ「ほら!『動くな、死ね、甦れ!』だよ!」

知史「……観たことないっすねえ(笑)。その後の2本も、観たことないっす。『ひとりで生きる』も『ぼくら、20世紀の子どもたち』も知らないっす。最後ちょっとメタみたいになるとか、監督の声が入ってくるとか、抑留日本兵が出てくるとか、知らないです」


 すーごい知ってんじゃん。次回へ続きます!