洋画フロアに来たものの、みんなが知ってる有名大作にはてんで行かないご一行。でこぼこ珍道中最終回、今度はアジア映画の棚に向かいます。(小川志津子)

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シンスケ「アジア映画ねぇ。 『トガニ 幼き瞳の告発』観ました? 韓国映画。最高っすよ。監督のファン・ドンヒョク、只者じゃないです!」

知史「観てないなあ」

シンスケ「実話を元にしているんですよ。ろう者の福祉施設で起こるかなりエグい事件を描いてるんですけど。完全ノーマークだったのが、同期の友人がオススメしてたから劇場で観たんだけど、これ、映画作りたい人は絶対観た方がいいです!」

知史「僕はツァイ・ミンリャンの『楽日』がおすすめです。これはキン・フーという監督の映画が上映されてる劇場でのお話なんですけど。全編にわたって、2〜3言しかせりふがないんです。ただ、淡々と、誰もいない劇場が映ってる。……俺結構そういうのが好きで。実験映画とかドキュメンタリーみたいなものが好きだったりするので、そもそもビデオ屋に置いてないってことの方が多いんですけど」


 そして知史局員は、唐突に、ほんとに唐突に言うのです。


知史「……さっきから気になってるんですけど。一人称、「俺」で行こうか「僕」で行こうか。それとも「私」かなあ」


 今か! 今それか!


シンスケ「ジョン・ウーは観てます? あえて、『ペイチェック 消された記憶』とかどうですか? これは配給が確かパラマウントでハリウッド製作だけれど」

知史「観ました。でも、俺の記憶から消されました。うまいこと言っちゃった(笑)」

シンスケ「俺、映画美学校の脚本コースのTA(ティーチング・アシスタント)をやってるので、「伏線の勉強になるかもよ」って受講生に言った記憶があります、エラそうなことに(笑)。で、ここがジョン・ウーなんですが、そういった物語レベルの伏線とはまるで関係ないところで、いきなり銃を置いて棒で戦うシーンがあって」

知史「(笑)」

シンスケ「今の今まで銃で闘ってたのに、いきなり銃を捨てて棒を持ち出すんですよ。で、その伏線が、最初の方にあって。棒の練習をしている主人公の姿が、確かに入ってるんです。だから、どんな展開も計算で行けるよ、と。それは学べるんだな、と。それが本当に面白いのかは知りませんが(笑)」

知史「『フェイス/オフ』とかも、あれだけ撃っても死なないっていうのは、この時代だったから成り立ってたんだろうな。今だと無理かも」

シンスケ「今は、ないよねそういうの。出来ないんだろうな、映画を知っていると逆に…」

知史「スローモーションで銃撃戦とか、今やらないですもんね。好きですけど」

シンスケ「ジョニー・トーがあるぞ……マズい……」

知史「ジャスコで銃撃戦する映画ありましたよね。なんだっけ……」 

シンスケ「関係ないけどこの間、一人では絶対に入ることはないショッピングモールに行った時に「ジョニー・トーならここで銃撃戦をどう撮るか」ということを連れを放って真剣に考えてしまった……タイトル、なんだっけ……」

 『ザ・ミッション 非情の掟』ですね。調べました。



知史「ホン・サンスとか、面白いですよ」

シンスケ「ホン・サンスは、暴言を吐いてしまうと基本的にどれ観ても大体同じなので(笑)、どれ観ても大丈夫です。安定の作家性」

知史「結構撮り方が独特で、ズームとかがんがんするんですよ。でもデビュー作の『豚が井戸に落ちた日』はそんなにしてなくて。80〜90年代の台湾映画の、ずっと引き画で殺伐としてる感じに近い」


 しかし韓流ドラマの棚がものすごいんです。「大量」以外のボキャブラリーがみつからない。


シンスケ「韓流だからって『みんなキムチ』ってこれタイトルとしてどうなんだ(笑)」


 で、ここでシンスケ局員が「あ!」って言うんです。「俺、ラブコメの話するの忘れてた!」……え、ラブコメ? あなたが?? イメージが合わなくて一瞬たじろぐ。


シンスケ「勉強しようと思って、観始めたんですよ」

知史「モテたい、と」

シンスケ「そう、モテたくて(笑)。いまや女性にしか興味ないですからね(笑)。いや、TVドラマの企画出しをやってた時に、ラブコメだったら企画が通るんじゃないかと思って、勉強しようと思ったんですけど。それで観始めたら結構面白くて、オススメがいっぱいあるんですが、パッケージがないと思い出せなくて喋れない……」


 みんなでラブコメのコーナーを探します。しかしその途中に、ホラー映画のコーナーが。


知史「これは触れなくちゃダメでしょう。ロメロの『悪魔の儀式』。2年前ぐらいに友だちと、うちのプロジェクターで観て、傑作じゃないか!と。これはもう「ジョージ・A・ロメロ」ではなく「ゲオルグ・A・ロメーロ」と呼ぼう!と。こんなに作家性の強い人とは思わなかったって、興奮した思い出があるんですけど。でもネットのレビューとかを見たら、ホラーファンの人にはめちゃくちゃ評判が悪くて(笑)。映画ファンから観ると、とても面白いんですけどね」


 すると、ずっと隣のラブコメコーナーでブツを探してたシンスケ局員がやってきます。


シンスケ「『抱きたいカンケイ』っていうんですけど。ナタリー・ポートマンが主演してて。彼女が、確か研修医なのかな。で、男友達のアダムくんとセフレになるんだけど、紆余曲折があって、本当の恋愛に行き着くんですよ。で、この俺が、泣いたんです。過去、先輩に「スズキくんはホントに人非人」と言われたこの俺が、ラブコメで泣いたんですよ!」

知史「わー気になるなあそれは!」

シンスケ「最後の山場、俺、この顔で号泣。この髭でラブコメで号泣。ぜひ観てほしい!」


 この時彼は『ラブ&ドラッグ』という映画を語りたくて、探しに探していたのですが見つからず。読者は各自、自分で観て下さい。 

※(局員シンスケ:注 映画の出来と関係があるかは分からないが、『ラブ&ドラッグ』ではちゃんとしたラブコメらしく、アン・ハサウェイがしっかり脱いでいます。これだけ書けば、未見の男どもは間違いなく観てくれることでしょう) 

 


知史「あ、これ、俺大好き。トビー・フーパーの『スペースバンパイア』!」

シンスケ「『スペースバンパイア』ね!」

知史「宇宙の吸血鬼が出る話です」


 ……まあ、そうでしょう。


知史「セクシーな女性の姿をして男の生を吸っていくという。最終的にはイギリス全土阿鼻叫喚みたいになって、すべてを、映画が、突破するんです」


 ん?


知史「観ればわかります。映画が、映画を、突破するんです」

シンスケ「(笑)」

知史「おわあ! 終わったあ! すげえ!!」ってなります」


 そして、戸棚の一番奥、アート系というか実験系というか、そういう映画がたくさん積まれたコーナーを発見しました。


知史「僕はビデオアートとかも好きなんですよ。ブルース・ナウマンっていう人が特に好きで。なんか、ナウマン本人があごのあたりまで映ってて、壁の角のところで背中をドン、ってぶつけ続けてる1時間、とかあるんですよ。めちゃくちゃいいっす。あと、ウォーホル。エンパイアステートビルを7時間、固定カメラで撮ってるだけとか。きのこをただただ食べるだけの30分とか」


 そういうものを、文字で語るのって難しいですね。


シンスケ「あ、これやばいよ。『Step Across the Border』。これ本当にやばい。フレッド・フリスとか、ジョン・ゾーンとかアート・リンゼイとかが出てくるんですけど。日本の、確か職人さんだかが立てる作業音からいきなり彼らの超絶セッションが始まったりするんです。なんか野菜切っている映像から、いきなり次に意味不明なセッションの場面につながったり(笑)。これは完全にドラッグ・ムービーですね。なのでこっちもおかしくなるから、正確には覚えていません(笑)。友だちのディレクターさんの家でのパーティー中に全員酒入りまくって久々に観て、「やばい!」って言い続けたことだけは覚えている(笑)」


 そんな感じで、ダブル鈴木のビデオ屋ツアーは終わります。え、まとまってない? まとまるわけがないでしょう、だって彼らがビデオ屋に見ている景色はカオスだ。まとまらない、それこそが世界の真髄。さあ、次は誰とビデオ屋行こうかな!