ただただ、眺めるのみなのだ。たぶん観た人にしかわからない「駄話」の連鎖。でもこの「駄話」にこそ価値があるのだと、映画美学校界隈の人たちは知っている。「駄話」であろうがなかろうが、出そう。交わそう。そうやって彼らの「映画」は続いていくのだ。(※ネタバレあります、ご注意ください!)

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飯島 ロボットって感情を持てるのかどうか、っていうテーマがよかったなと思った。

 

横山 自発的にそれを持っているのか、「持っているように見える」のか。

 

飯島 創造者自身がロボットになっちゃって、僕たちはそれまでの過程を見ているからわかるけど、あれは果たして人間と呼べるのか。

 

坂田 ヨーランディはなおさらね。生きてる時に残したアルバムの写真みたいなものを使って作られてるわけだから。

 

横山 そう、そこがチャッピーやディオンとは違うよね。

 

保坂 俺は、ロボットは永遠に生きる、ってところでゾッとした。「うわ、永遠に生きるんだ……」って。

 

横山 ほんとに。ゾッとしますね。

 

保坂 あの結末はつまり、チャッピーが神になったっていうことなのかな。新たな人類を創造したわけでしょう。ってことは、わりとSFの定番の展開なのかな。

 

飯島 そうですね。『猿の惑星』っぽいというか。

 

横山 神との関係の話でもあるよね。「神とは何か」っていう話に結局なっていく。どれだけ根強いんだろう、キリスト教って。仏教における「輪廻転生」みたいなこととはまた違う感じがしない?

 

坂田 次の場所へ行く、っていうことだよね。

 

中村 「ネクスト・ステージ」ってことか。俺が感じたのは、出てくる人たちは欧米人なのに、背景は何か、アジアっぽいものを感じたんだよね。森の匂いがする。そうなると、話が違ってくるのかなと思って。

 

飯島 「輪廻」とは違うと思う。ロボットにだって寿命があるから。

 

坂田 ものは同じだけど、中身が入れ替わって。でも途中で「ものに宿るんだ」っていうくだりがあったでしょ。魂はコピーできないんだ、と。ディオンが言ってたんだっけ。

 

横山 自分が自分で証明しちゃう。

 

坂田 チャッピーが、死ぬのをすごく怖がるじゃないですか。最初は「死」なんか知らなかったのに、途中から異様に怖がりだして。

 

保坂 それが「成長」ってことなんだろうね。

 

坂田 シナリオの都合上、そうさせているのかもしれないけど、僕は成長の段階として、「ああ、それに気づいちゃったんだ」と思いました。自分には終わりがある、何とかして生きなきゃ、って思ってとんでもないことをしてしまう。

 

保坂 この結末って「チャッピーが神になった」というふうにも取れるけど、観客が受ける感覚として「うわあチャッピーがすごい存在になった!」っていう感じがないよね。そこがちょっと弱いかもしれない。

 

飯島 昔のAIとかロボットものって、結果的に人間の歴史にアクセスしていると思うんですね。人間がどれだけの歴史を経てきたのかということを踏まえて、「お前らはクズだ」「殺してやる」「書き換えてやる」と。でもチャッピーは、人間としてというより、チャッピーとして生きるっていうことを希求していた。自分の手の届く範囲内の願いを、ただただ実行しているにすぎない。

 

横山 俺は、※『お母さん、ありがとう』のラストを思い出しました。(※保坂が映画美学校高等科のコラボ作品として今年作ったロボットもの中編映画)

 

保坂 俺も思った。

 

横山 あのラスト、もろ『チャッピー』じゃないですか。

 

中村 やりやがったな、ブロムカンプ!(笑)

 

保坂 俺が好きなロボットもののパターンがあるんだけど。まず、「ロボットって怖い」っていう映画があるじゃない。『ターミネーター』とか。もう一つ、「ロボットであることの哀しみ」の映画もあるでしょ。『ロボコップ』とか。でも俺が好きなのは『ウォーリー』とか『A.I.』とか、ロボットが純粋であるがゆえに、どんどん人間を超越する存在になっていって、でもそれが人間の感情を代表する、人間より人情があるような境地にまで到達する映画なんです。『お母さんありがとう』も、まさにそう。

 

坂田 でもチャッピーはずっとチャッピーでしたね。

 

飯島 そこが僕は好きなんだけど。

 

横山 チャッピーは人間よりも強く「生きよう!」って思ってる感じがする。

 

保坂 やばい、ブロムカンプ、俺の2歳下だ(笑)。へこむなあー。

 

中村 いや、Twitterで反撃しましょうよ。「お前、盗んだだろ!」って(笑)。

 

飯島 自分の趣味全開!っていう感じがしたな。ニンジャとヨーランディに関しても、自分たちが好きなものをそのまま出してきた感じ。

 

中村 でも音楽の使い方が中途半端じゃなかった? もっと聞かせろよ、って思った。

 

横山 全部BGMだったもんね。ラップシーン入れてほしかった。最後まで出し惜しむんだなあと思って。

 

坂田 最後ぐらい歌えばいいのにね。

 

飯島 でも、犬のくだりは好き。

 

横山 俺も好き。

 

中村 あと、あの建物って何なんだろ。

 

坂田 変な建物だったね。あそこってたぶん、道ぐらいしかないよね。

 

飯島 俺がひっかかったのは、チャッピーが放置された場所。なんで微妙に郊外だったんだろ。丘の上で、街が下に映ってて、悪そうな人たちがなんとなく4~5人、いるんだよね。

 

中村 あの悪ガキたちがチャッピーを攻撃し始めるまでのタイミングが早すぎ(笑)。

 

横山 俺らの心の準備を越えてたよね。

 

中村 悪ガキの攻撃の速度と、ヒュー・ジャックマンが脅すシーンと、電源が入ったばかりのチャッピーにニンジャが「ほら、こっち来いよ……」「……こっち来いよぉっ!!」ってなるまでの速度が全部似てて(笑)。いきなり反転する感じ、嫌いじゃないです(笑)。

 

横山 うん、嫌いじゃない。ばっきばきだな!って思った。展開が。

 

保坂 これもネット情報だけど、町山智浩はチャッピーのことを「パトレイバーにそっくりだ」って書いてたよ。

 

横山 あー。確かに。

 

坂田 僕、原案のゆうきまさみさんが『チャッピー』について書いているのを読んだんですよ。パトレイバーとは真逆だって書いてました。パトレイバーは、ロボットをいかに工作機に戻すか、つまり仕事する機械としてのロボットだから、感情はゼロだと。形が似ている以外は真逆だと。むしろ『鉄腕アトム』とか、その元になる『ピノキオ』とかのほうが近いと。「自分は何者なんだ?」と悩んで、木の身体と魂の問題になるという点において。

 

中村 確かに、パトレイバーを観ていて「うわあ純真だなあ!」とは思わないですよね。

 

飯島 パトレイバーってロボットアニメに見えるけど、人間ドラマだからね。

 

横山 そうだよね。パトレイバーって、パトカーだもんね。

 

中村 はっきりと「物」だよね。

 

横山 確かに最近の作品は、どんどんロボットが巨神兵みたいになってきてるね。エヴァンゲリオンだって、でっかい人だもんね。

 

保坂 そして『A.I.』の時もそうだけど、だいたい「これは『鉄腕アトム』のパクリじゃないか」って言われるという。

 

坂田 問題の根幹が『ピノキオ』と同じで、そこに行き着いちゃうという。

 

中村 じゃあ、『チャッピー』が新しかった点って、何だろう。

 

坂田 ……ラッパーに育てられるっていうことじゃない?

 

一同 (笑)

 

飯島 あと、あまり過去に触れない。現実から未来を見てる。

 

横山 そこが、見た感じの軽さにつながってるんだろうね。俺は嫌いじゃないな。

 

飯島 うん。そこがよかったなと思って。チャッピーは自分の出自を求めない。「作ってくれてありがとう」ていう感じじゃん。

 

中村 でもあいつの方向性としては、知らず知らずに、自分と同じ種類の存在を増やしていってるじゃない。だって、ディオンが撃たれたのって、一発だけでしょ?

 

横山 俺もそれ思った! 腹一発だけ。研究所じゃなくて病院に行ったら?って思ったんだ俺(笑)。

 

坂田 あれは、あそこにまだ魂がある、っていう解釈じゃない?

 

飯島 撃たれたまんま、ずっと放置されてたもんね(笑)。

 

坂田 「自分のバッテリーが無くなるから生きたい!」って思って、でも「ディオンを助けなきゃ」って思って、お母さんを放っておくじゃない。

 

横山 そう、お母さんを放置するんだよね。

 

中村 すぐ車に乗っちゃうんだよ。二人とも抱えていこうとするならわかるけど。

 

坂田 倒れたお母さんに対して「どこかに連れていこう」っていう発想がそもそも見えない。

 

中村 そもそも、お母さんがそこにいる、っていう概念自体が見えない!

 

坂田 じゃあ自分のことが大事なのかな、と思って観てると「自分はいいから」的な行動を見せるでしょ。

 

飯島 でも自分も新しい身体を得ることができるのは、自分とディオンしかいないからっていう選択だったんじゃないの?

 

坂田 そういうことなのかな……でもあそこでお母さんを捨てたっていうことを現実的に考えると、ものすごく怖いなって思う。「物」になった瞬間に興味を失うんだ!と思えて。

 

飯島 興味がなくなった、っていうほど切り捨ててはいないと思うけど、次のミッションにパッと切り替わった感じだったんじゃないかな。

 

――最後に質問をしてもいいですか。皆さんのお話を聞いていて、私たち一般人とは映画の観かたが違うように思ったんですけど、その視点はこの学校で得たものですか?

 

中村 え。何か普通と違いますか。

 

坂田 普通ってどうなんでしょう。

 

横山 「チャッピー可愛いー♪」みたいな感じ?

 

――普通は「チャッピー可愛いー♪」から「どうして可愛いんだろう?」へは行かないと思うんです。

 

一同 あーー。

 

保坂 話の矛先が細部に向かうからですかね。

 

中村 でもやっぱ、細部って大事じゃないですか。それのおかげで映画に乗れたり乗れなかったりするでしょう。たぶんカシンさん(坂田)は、カシンさんが観たかった細部がなかったから、この映画に乗れなかった。俺は、ヒュー・ジャックマンがいてくれたから、乗れたと(笑)。

 

坂田 そういう視点をここで習ったというよりは、映画を「作る側」として観るようになったっていうことじゃないですかね。でもその点について言わせてもらうと、もっとすごい人たちがここにはたくさんいますからね。万田(邦敏)さんの映画の観かたとか聞いてると、気持ち悪いくらいですもん。

 

中村 「万田さんが気持ち悪い」って小見出しにされちゃうよ(笑)。

 

坂田 B学校の『アメリカン・スナイパー』の回とか、すごくなかった? どこまで観てるんだろうこの人たち!と思った。

 

横山 大丈夫なのかな俺たち。B学校史上一番アホっぽい回になるんじゃない、これ(笑)。